ネパール遭難日誌91

12/28(Day5)

午前7時起床。アントニーだけ板チョコ半枚食べる。(残り1枚半)二人とも、少しイライラしている。半ばヤケ気味。死を少し覚悟している。
 とりあえず、(基本的には、どこへも八方塞がりだが)北西へupすることにする。(頂上へ行ってshoutの予定)→→もうこの岩場には戻らないつもり・・・(つまり、いちかばちか)
 天気は霧。見通しが悪い。少し歩くだけで息が切れる。体力が、かなり落ちている。途中で飛行機の飛ぶ音がした。アントニーは急いで懐中電灯を取り出したが、間に合わず。また、衝動的に鏡付きのくしを割ろうとしてケガをした(天気は曇りなのである)。もうほとんど錯乱状態。相当イラだっている。雪もぱらついてきた。もうどうにでもなれ、という感じで北西を目指す。

 "I don't want to die bit by bit." アントニーは言った。
 "I have a knife to cut my wrist."

 何を言い出すんだ?という感じで、ちょっと恐くなったが、とりあえず歩く。

 約10分後、trailを発見!
 
 あとは、コンパスを慎重に使いながら南へ、南へと進む。途中、火を起こした跡があったので、かなり安心する。それまで、trailらしきものが現れても、結局途切れたりすることが多かったので不安だった。(途切れないように・・と心の中で念じていた)
しかし、今度は全く途切れない。また、進行方向は南を維持している。
 そのうち、見覚えのある場所を通過。
水牛の群に出会う。いよいよ確信深まる。(だが、アントニーは覚えていない、と疑っている) 
 2時間程経過したところで、雪が降り始め、雨宿り。
 "HELP!"と叫ぶと、"Au!"との返事!→→ネパール人の村びとだった。

 助かった!

 30分程歩いたところに村びとの家があり、ダールと水牛のミルクをごちそうになる(ニワトリを一羽しめてくれた)。しかし長時間に渡り、絶食同様の状態だったため、胃が受けつけず、ミルクをのむのが精一杯だった。
 アントニーと抱き合う。ネパールの娘の微笑みを見ていると涙があふれ出てきた。

 "Unbelievable!" "It's a miracle!"我々は言った。

 僕は、アントニーと首を振りながら顔を見合わせて微笑みあった。