ネパール遭難日誌91

12/25(Day2)

午前1時頃より小雨が降り出す。暗闇の中、どこにも逃げようがないので、頭に彼のジャンパーやナイロンを掛けてしのぐ。
 午前4時頃目を覚ますと、足が冷たい。首を出してみると、周りには雪が積もっている。"It's snowing."彼は言った。僕は手袋をはめ、体を縮こまらせて寝袋の中にもぐり込む。足はだんだん冷たくなり、触るとずぶ濡れである。午前7時には日が昇り明るくなる、との判断でそれまで使い捨てカイロを三つ寝袋の中に放り込み、ジャンパーを着てなんとかしのぐ。・・・実に辛い時間だった。凍え死ぬかと思った。僕が寝ている間に、他の荷物は、彼がちゃんと一つにまとめてナイロンを掛けてくれていた。。
 午前6時50分頃、すばやくずぶ濡れの寝袋をしまい、タイツと靴下を替え、出発の準備をする。板チョコを半分食べる。
 午前7時過ぎに、trailを見つけて引き返すつもりで南へ向かう(彼がコンパスを持っていた)。
 天候は曇り。非常に寒い。少し雪がぱらついている。雪のためtrailが隠れて、しかも滑りやすい。trailなしでの歩行は非常に辛い。体力がいるし、方角がクルクル変わる(つまり進行方向が一定にできない)。気が付いたら北東に向かっていたりして、磁石がおかしいんじゃないのか?と思うほどだった。
 午前9時頃雨も降り始め、体も凍えるので、trail探しを一旦放棄。元の場所へ戻ろうとするが、ままならず途方に暮れるが、なんとか小川にたどり着く。しばらくすると上に大きな岩があり、雨や雪をしのげそうな場所を見つける。実際そこは非常に好都合な場所で、南向きで十分に乾燥し、巨岩の出っ張りにより、完全に雨、雪がshut outされていた。
 僕達はかなり凍えていたので、火を起こすことにした。5、6度失敗し、一時はライターがない、と大騒ぎになったりしたが(彼のポケットにしっかり入っていた)、結局火を起こすことに成功(ゆうに3時間以上はかかっただろう。当時読んでいたニーチェの文庫本も、ちぎって使った)。 
 
その場所は乾木が多く、濡れた体を温めるのには絶好の場所で、不幸中の幸いであった。僕達はそこで、冷たく濡れた靴下、手袋、靴、寝袋(ずぶ濡れで、なかなか乾かなかった・・・夜までかかった)を乾かした。→→生気がようやく蘇ってきた。
 少し眠る。彼は食べられそうな木の実(非常に苦かった)を取ってきたり、乾木を集めたりしていた。天気は依然良くない。寒い。
 午後3時頃より、下痢、腹痛が出現。→→正露丸、ビオフェルミンを内服するも、夜まで続く。排便3回。便は黄白色、水様、量は少。
 午後5時30分頃より、ひとりは火の番、ひとりは睡眠(2時間ごとに交代)の体制をとる。あたりは闇。たき火の周囲だけが、わずかにほの明るいのみ。一度闇の中にて排便。まずまず良く眠れた。濡れていたものも、ほとんど乾いた(ただし、寝袋はまだ少し湿っていた)。