ネパール遭難日誌91

プロローグ

 この遭難日誌は、私が1991年の冬休み(医師国家試験の約三ヶ月前)に、ネパールへトレッキング目的で旅行し、遭難したときの記録である。重要な国試前だったが、どうしてもトレッキングに行きたかった。その衝動を抑えることができなかった。そんなわけで、飛行機に乗るときも、長距離バスに乗るときも、国試の問題集を解いていた。今考えると、変な奴だったと思う。
 さて、トレッキングは当時初めてで、当たって砕けろの精神で行った。そんなわけで、トレッキングの最低限守るべきルールも知らなかった。単独、且つガイドなしのトレッキング、午後になってからの出発、コンパスの非所持etc・・今から考えると、非常識きわまりない考え、装備でトレッキングに望んだのだ。そんな中で、起こるべくして起こった事件でもある。
 その事件の内容については本文に譲るとして、その簡単なルートについて説明する。基本的なルートは、ふもとの町ポカラからアンナプルナB.C.(約4000m)まで歩くコースである。当時、私とギリシャ人のアントニーは、ダンプス(1799m)からランドルン(1646m)に行こうとしていた。(下図参照)つまり、そんなに高地ではない。でも、その途中で道を間違えたがために、地獄の五日間を過ごすことになる。
 トレッキングは、それほど高地を歩くわけではないので、安全と思われがちだが、一歩間違うと非常に危険な目に遭う。実際、毎年行方不明者はでている。残された家族の痛みは計り知れない。決して侮ってはいけないのだ。
 この愚かな私の体験は「地球の歩き方(ネパール編)」に、囲み記事として掲載されている。こんなバカなことを繰り返して欲しくないから、トレッキングの後、即行でカトマンズからダイヤモンド社に投稿したのだ。1999〜2000年版には、P209に掲載されている。(ただし、2000〜2001年版からは、削除されてしまった・・残念!) 記事の内容に興味のある方は、
こちらをご覧下さい。

それでは、本編をどうぞ!


トレッキングの地図