まるちょうの実際

私は、ホロンボ・ハットまでは、全然大丈夫だったが、キボ・ハット付近で、高山病にかかった。4000mを越えると大部分の人に頭痛など高山病の症状が現れる。私も、頭痛と腹痛に悩まされた。頂上へのアタックは、かなり迷ったが、せっかくここまで来たのだからと、アスピリンを飲んで、行くことにした。パーティーの他の仲間も、それに快く同意してくれた。
そして午前二時からのアタック。頭痛はかなりおさまったが、腹痛が間欠的に襲ってくる。かなり過酷なアタックになった。ギルマンズ・ポイントの直前で、たまらず野ぐそ(下痢便)。傾きながら、なんとか用を足した。お尻が、寒かった。そこからギルマンズ・ポイントまでは、まさに気力だけで登った。ギルマンズ・ポイントに着いた頃には、喜びはもちろんだが、頭はもうろうとしていた。そして、当然のことながら、ウルフ・ピーク(最高点)へのアタックは不可能だった。実際、最高点まで到達するのは、半数以下だそうだ。パーティーの他の三人は、みな元気だったが、私の状態を見て、アタックを中止した。とても、悔しい気分だった。そして、みんなにすまないと心から思った。
そして、息を切らしながらの写真撮影。シャッターを切るとき、息を止めているという事実を、初めて実感した。下山しながら・・なぜか涙がボロボロとこぼれてきた。10分くらいだったろうか、全然止まらなかった。激しい緊張の後の奇妙な感情の揺れだったかもしれない。その時見た、神々しいまでの風景は、今も鮮烈に覚えている。
結局、私はネパールに続き、キリマンジャロでも最高点に立てなかった。つまり、ネパールの仇をアフリカでとることはできなかったのである。でも、出来る範囲でやるだけやったという充実感はあった。というか、ギルマンズ・ポイント到達の証明書をもらって、なぜか満足だった。またいつか、ウルフ・ピークを目指してアタックしてみたいと思う。その時は、もっと事前に富士山に登るとか、準備して・・