京都愛宕山

愛宕山を歩く(2)

4.頂上にて
本殿につくと、とりあえず参拝である。私は、いつも五円玉を賽銭箱に入れる。それ以上入れたことがない。あまり信心深いとは言えないのかもしれない。「今回は○回目です、次も来られますように・・」などと、願を掛ける。
そして、濡れたシャツとバンダナを交換する。どちらもドボドボで、絞ると汗が滴る。
暖かい時分には、広場で昼食を食べる。昼御飯は、いつもおにぎり三つ。これが、うまいのだ。五月中旬には、八重桜が満開となる。とても贅沢な花見だ。食べたあとはタバコを吸って、一服。もちろんポイ捨てなどしない。あとは昼寝。とても気持ちよい。
寒い時分には、本殿内のストーブのある部屋で昼食をとる。ちなみに、このストーブは、全て愛宕山で伐採された杉の木を薪にして燃やしている。少々煙たいし、混雑していることもあるが、それはそれで楽しい。持参の缶コーヒーをストーブの上に置いて温めてから飲む。これが、うまい。

5.下山(裏参道)
小一時間もすると、下山である。帰りも表参道から下りることが多いが、ここでは、裏参道(月輪寺経由)のルートを紹介する。下りは、当然のことながら、速い。しかし、あまり急いで下ると、膝を痛めたり、転倒の原因になる。だから、登りと同様、ゆっくりがいいのだ。
月輪寺へは、本殿に上がる石段の前を右に折れ、ちょっと行くと道標があり、そこを下っていく。下りはじめると、視界が広がり一望の下に京都市街が見える。更に下りると、山肌が乱暴に切り開かれたところに出る。ここは、愛宕砥石の採石場だったところで、採石を終わった後、植林もせず、ほったらかしにされている。京都市内から愛宕山を見たときに、山頂の右側に白く見えるところである。
途中で、大杉谷へ通じる小道がある。この道も、なかなか情緒があって、よい道だ。
ジグザグの急な下り坂を40分ほど下ったところに小さなお寺、月輪寺がある。

6.月輪寺
「親鸞上人のお手植え」と言い伝えられる「涙しぐれの桜」や重要文化財指定の鎌倉時代の仏像がある。ここで、とりあえず一服。のどの渇きを潤すために、空也上人の龍神伝説が残る竜奇水という地下水を飲む。湧き水特有の冷たく甘い味が、これまでの疲れを癒してくれる。ちなみに月輪寺は、空也上人が念仏道場として開山し、法然上人も参詣したという天台宗の古刹だ。寺から更に40分ほどジグザグの急な下り坂を下り、足が疲れはじめた頃にアスファルトの道に出る。

7.空也滝
林道から沢沿いに小さな階段を上がっていくと、落差が約12mもある空也滝が目の前に現れる。その威厳あふれる水の流れに、思わず息を呑む。滝が見せる水しぶきの舞いに心も清らかになった私は、清滝川に沿うアスファルトの道を、自分の車のもとへ歩いて帰る。車に戻った頃には、ひと仕事やり終えた、という感じの達成感が、体の中に充満している。

以上、清滝から表参道を登り、月輪寺を経て清滝に戻るコースについて記したが、これは50年間、いやそれ以上変わらない歴史的な道で、安全でもあり、誰にでも勧められる。
これを読んで、少しでも興味を持たれた方は、ぜひ愛宕山を試して欲しい。必ず、何かを感じ取ることができるはずである。